ヒプノセラピーサロン・レインボー
ヒプノセラピーサロン・レインボーは、西荻窪駅南口から徒歩2分です。
お久しぶりでございます!
少し前から、ツイッターにツイートを載せています。
けれども、ほとんど他で見た、「おもしろかった」や、「共感する」や、「ためになる」などの理由の、気に入った記事の引用ですが・・・。
ツイッターは、世界中にいらっしゃる自分のお気に入りの方が発信した情報を、即座に受け取れるのが楽しいですね。
そんな事をいまさら知って、喜んでいます(汗)
サロンを再開いたします。
皆さまこんにちは!
10月1日より、サロンを再開させていただきます。
勉強を積んで気づきも得、人生の経験も積んで(?)また再開させていただく運びとなりました。
皆さまのご期待やニーズにお応えできますよう、これからも精進して参ります。
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
レインボー (18)
『ここのところひんぱんに、妹が向こうの情報をいろいろ調べて、メールで送ってくれます・・・』
みちるさんからそう、僕宛てにメールが届いた。 妹のみのるさんはイギリスに帰って、また父親の元でハイスクールに通っている。
『以前銀林くんが話してくれたように、イギリスでは花やハーブといった植物は生活の大切な一部分で、人々はそれをいろいろな形で上手に暮らしの中に役立てているのですが、それはまた病院などでも利用されていて、日本ではもうおなじみのアロマセラピー用のエッセンシャルオイルや、あなたからいただいた、花の波動を水に転写させたフラワーエッセンスなども、患者さんの心のケアや、実際の現場の治療にも使われているほどだそうです。
人々は自然から得るものをとても大切に考えていて、受け継がれてきたもの、また新たに人の英知となったものも、今の技術の中で大きく貢献、発展しているようです』
数日後、みちるさんから、年明け前に退院できるといううれしい知らせの電話があった。 週に一度、彼女に堂々と会える口実がなくなるが、僕も受験の追い込みだ。
「ひとりで自由に行動できるようになったら、夏休みにフィンドホーンに行ってみようと思ってるの。 妹も一緒に行くと言ってるのよ。 いろいろ調べているうちに、自分も興味がわいてきたみたい」
電話の向こうでそう言って、彼女は笑った。 弾むような声からは、彼女が新しい希望にあふれているのがわかる。
「銀林くんが持ってきてくれた花の写真集にのっていた風景のような、丘いっぱいに花の色で描かれた虹も見たいの。 だからあの場所にも、花を訪ねる旅をしようと思っているのよ」
なんだか喜びの興奮覚めやらなくて、コートを着て夜の散歩に出た。
僕には僕の目標がある。 まずはその目指す目標のスタートラインに立てる事。 そして、古くて新しい様々な方法も取り入れて、訪れる人の痛みをできるだけやわらげてあげられるようなケアをする事。
体が痛めば心が痛む。 だから全体でその人を考えて支えたい。 そんな医療がしたい。 それが今の、僕の夢になった。
ひとりでもできる事から始めたらいい。 難しく考えることじゃないさ。 歩きながら僕は口笛を吹いてみた。
自分の部屋に戻って来た。 暖房を付けもう一度キッチンに下りて、紅茶の入ったティーポットとふたり分のカップを持って来る。 ついでに缶入りのクッキーも。
窓辺にクリスタルを置こうと思ったら、もうそこにスイがいた。
「おっ、いらっしゃい。 早かったね」
僕の言葉に、お茶目な笑顔でうなずいた。
お茶を飲み、マーブル模様のクッキーを食べながら、スイはいつになくおしゃべりだった。 同じ妖精仲間のブラウニーが、油断していると知らない間に後ろにいて、いたずらにわたしの髪をひっぱるだとか、自分が大事にしていた真珠の珠を、パックにとられただとか。
「パックになんて見せてあげるんじゃなかったわ。 返してって言っても知らんぷり」
そう言って口をとんがらせていた。
スイにはスイの世界があるのだった。これから先もそこで、彼女の言う『学び』をしながら、きっとまた、どこかで誰かを助けるのだろう・・・。
何がどう今までと変化したのかわからなかったが、僕はひとつの・・・寂しい予感を感じていた。
「じゃあ、きょうはこのへんで失礼するわね」
スイの言い方は、僕たちの関係に「またあした」 があるようだった。
「もちろん、また会えるよね?」
思わず口をついて出た僕のその問いに、スイは笑って、
「当たり前じゃない」
と言った。 そして、耳元まで飛んできてささやいた。
「また、お茶とお菓子でおしゃべりしましょう」
そう言って、僕の頬にひとつ小さな口づけをした。
そして彼女は、出会った時のように笑顔で手を振って、金色の光の輪の中にかき消えるように見えなくなった。
ふと窓辺を見ると、置いてあったはずのクリスタルが無くなっていた。
次にめぐって来る春、花の季節に、きっとあの小さな彼女に良い報告ができるように、受験に全力をつくそう。
窓を思いきり開け、身を乗り出して空を眺めた。 静かな夜、濃紺の澄んだ空に月がこうこうと輝いている。 吐く息が白く凍って霧になる。
春・・・いつかめぐり来る人生の春に、僕は彼女にもらった種を、今度は自分の中に咲かせなくては。 そしてその花を、たくさんの人たちに届ける事ができるように。
了
レインボー (17)
3日後の学校帰り、僕はプレゼントを持って病院へと向かった。 それは、街で見つけたかわいい焼き菓子の詰め合わせと、花屋の店先にあった、淡いピンクとブルーの花の小さなブーケだった。
ドアをノックする。
返事がない。
あれ、きのうメールで行くと伝えておいて、OKの返事をもらったはずなのに・・・と考えていたら、コツン、コツンと廊下をこちらに向かって来る音がした。 その方に振り向いて驚く!
「すごい! もう歩けるんだね!!」
両脇に松葉杖を挟んでだったが、義足をつけた足で立って、みちるさんは歩いていた! 僕の、たぶんはじけそうにうれしそうな顔を見て、彼女は照れくさそうに笑って言った。
「ちょっと前から、ひとりで売店にも行けるくらいになってたの。 あなたを驚かせたくて、黙っていたのよ」
「やった! ばんざい!!」
その大きな声に、ナース室の看護師さんが首だけ出してこちらをのぞいた。
「すいません」
小声になってあやまる。
「中に入りましょう」
そううながされて、僕たちは彼女の部屋に入った。
「ちょっと後ろを向いててね」
そう言われて、そのようにする。
ぎしぎし、と、何かを外すような音。 それからみちるさんはベッドに座ったようで、
「いいわよ」
と声がした。 後ろに向き直り、ハッと息をのんだ。 彼女が切断した方の足を、サポーターを巻いてはいたが直接見せて、もう片方の足と一緒にベッドの上に投げ出して座っていたのだ。
気持ちのふいを突かれて、不覚にも僕は涙ぐんでしまった。
「どうしたのよ、銀林くん」
彼女は僕をなぐさめるようにやさしく言った。 これじゃあ立場が逆じゃないか!
「あなたがいたからきっと、こんなに早く受け入れる事ができたんだと思う。 本当にそう」
彼女の目にも、涙が浮かんでいた。
「お茶でも飲みましょう。 カモミールの」
そう言ってにっこりすると、戸棚の引き出しの中から彼女が取り出したのは、彼女の鉢に咲いたのを陽に当てて干した花だといった。 ガラス瓶の中のそれは、冬の午後の弱い光を透かしてこがね色だった。
部屋の湯沸かしポットは、このごろハーブティーに凝りだした娘に、彼女の母が、すぐにお茶をいれることができるようにと買って来てくれたものなのだという。
ティーポットに花を入れ、お湯を注いで待つ間に彼女は言った。
「銀林くん、カモミールの花言葉を知ってる?」
ふいの質問に、そんなこと考えた事もなかった僕は、首を横に振った。
「この花の花言葉はね、『逆境の中の活力』 って、言うんですって」
僕は一瞬、言葉を失ってしまった。 スイの顔がぼんやりと頭に浮かぶ・・・。
「それにしても・・・」
と彼女は言った。
「え?」
「それにしてもこのカモミール、本に書いてあったのとは、成長の早さも花の時期もほとんど違うのよね。 こんな種類があったのかしら? 銀林くん、確かお友達に種をもらったと言っていたわよね」
彼女は不思議そうに聞いた。
僕はスイの事を話して良いものかどうか迷った。 そりゃそうだろう。 実は妖精の友達がいます、なんてマジメに言われても、相手は返事のしようがないというものだ。 しかも場合によっては、こちらの頭の中を疑われかねない・・・。
だけど・・・、と僕は思った。
だけどみちるさんなら、・・・彼女ならもしかして、まともに請け合ってくれるかもしれない。 直観が僕にそう言っているような気がする。
「友達はその種に、魔法をかけたって言ってたよ」
「魔法を!?」
驚いたみちるさんの目が、まん丸くなっている。 でも彼女はちょっと考えるようにしてから、また声をひそめて言った。
「その友達って、・・・もちろん人間よね?」
僕は黙って首を横に振った。
「え・・・。 じゃあまさかとは思うけど、魔法を使える、自然の精霊とか、妖精とかなのかしら・・・?」
今度は僕が驚く番だった。 思いもよらず、みちるさんの口からそんな言葉が飛び出してきたからだ。 お互いを驚きの目で見つめて、少しのあいだ口もきけずにいた。
「どうしてそんなふうに思うの!?」
今度は僕の方から切り出した。
「銀林くんは、イギリスにフィンドホーンという場所があるのを知っているかしら? わたしも最近妹から聞いて、初めて知ったんだけど・・・」
彼女は一冊の本を戸棚から取り出すと、僕に見せてくれた。
今から50年ほど前の、1962年11月、イギリスのスコットランドの北の端の、フィンドホーン村という場所に暮らし始めた人たちがいた。 雑草も満足に生えないような荒涼としたその土地に、キャディ一家の5人・・・夫婦と、まだ幼い3人の男の子たち・・・と、その友人のドロシーは、引いて来た古いトレーラーハウスを住居にして住むことにしたのだった。
一家の主人であるピーターは、それまでその村から8キロほど離れたフォレスという町のホテルで、支配人として働いていた。 そうなるまでの人生の主要な時間は、軍人として称号を得て仕事をしてきた彼は、ホテルの運営などまったくの無知だったが、ピーターが支配人になると、数年後には、ホテルの収益は以前の3倍にもなる。 その成功は、ホテル運営の細かな指示を、妻のアイリーンにもたらされる、神からの内的啓示(『ガイダンス』 と呼ばれる) により得て、それをピーターが中心となり忠実に実行に移す事、昼夜をいとわぬその努力により実現していったものだった。
しかしホテルの経営者は、ホテルが神の啓示に従って経営されているという話が広まっていくのを嫌い、一家をいったん別の場所にあるホテルに1年転勤させた後、突然解雇してしまう。
キャディ一家とドロシーは、明日からの職のあても、家すらないまま、住みかでもあったホテルを追い出されるように後にした。 神の啓示は、「すべき事は一日一日を生きていく事。 一度に一歩ずつ進んで行く事で、常にこのように生きていく事を学ぶ事であり、私の指導の下に一歩ずつ進んで行けば、すべては完璧に成就するでしょう」 と、総じてアイリーンに、そのように告げていた。・・・
その後しばらく、ピーターの職探しは奇妙なほどに失敗し続ける。 現金収入の道が途絶えたので、彼らは食事の足しにするために、ハリエニシダという、水も養分もほとんど必要としない、荒れ地にしか生えない植物が主だった、フィンドホーンのその砂地の土地に、菜園を造る事にしたのだった。
そのころ、一家と数年来運命を共にしてきた友人のドロシーに、変化が起きた。 自然の精霊の声が聞こえるようになったのだ。
「植物の精霊たちと、協力して菜園で働きなさい」
この声が聞こえた当のドロシーでさえ、はじめは半信半疑だったという。 しかし精霊・・・その野菜を担当する妖精たちから直接メッセージを受け、それに従い忠実に実行すると、味も形も大きさも信じられないほどのすばらしい野菜ができ始めた。 (驚くべき巨大野菜の収穫は、数年の後に終わってしまうが・・・。)
時には遠くの空にオーロラが見える事さえあるという、北の果てのその地で、その土壌と気候からは到底育つはずのないそれら農作物の収穫に、ドロシーは、
「フィンドホーンがエデンの園である事を証明し、自然界の精霊と人間が協力すれば、新たな可能性が広がる事を知らせるためにできたものなのです」
と、言っている。・・・
僕はそれを読んで、そこにはたぶん、嘘は無いだろうと感じていた。 信じるも信じないも、ほとんどが書いてある通りの事だろうと。 水晶を置けばすぐに現れて、力や勇気をくれたスイの存在は、まぎれもなく僕の現実だったから。
そして、スイがくれたカモミールの種は、驚く早さでしっかり育って、うっとりするほどの香りを放つ花を、豊かに咲かせた。 それはまさに魔法だった。
みちるさんは言った。
「イギリスの、特に地方ではもともとそういう伝説のある土地柄という事もあって、人間のために役に立とうといろいろ世話を焼く、精霊や妖精と言われる存在がいると、今でも信じられてるの。 子供のころ向こうに遊びに行って、ちょっとしたいたずらをたしなめられたりする時に、エルフィンにつねられるとか何とか、私も向こうのおばさんに言われたことがあったわ。 そして実際に彼らとコンタクトを取ることができたり、その姿が見えたりする人たちは、意外に多いらしいのよ」
彼女は話す途中でますます実感がわいてきたようで、ほほを染め、目を輝かせて言った。
「でもすごいわ! 銀林くんの話す事が本当なら、あなたはなんてすばらしい経験をしたのかしら。 わたしたちはなんて素敵な贈り物をいただいたのかしら!」
今そこにスイがいるように思えたのは、気のせいだろうか。 窓辺に飾ったブーケの花のあたりから、いつもスイが帰った後に残る花の香りが、かすかに香って来ていた。
レインボー (16)
塾の帰り。
クリスマスも間近に迫り、街のイルミネーションはひときわ輝いていた。 今年の僕にはほとんど関係ないのでなんだか少しさみしい気もするが、この、何ともいえない高揚した雰囲気は、きっと人々が思い描く夢そのものなのだろう。
家に着くと母親は外出中で、冷蔵庫の中にシチューがあると、テーブルの上にメモがのっていた。
食事が済んで、洗い物を流しに戻すと2階へ上がった。 椅子に座り、なんとなく机周りを眺める。 ・・・なんだかいろいろなものが積み重なっている。 参考書、問題集、ノートにプリント類・・・新聞雑誌のたぐいまであってごちゃごちゃだ。
片付けよう。
まずは、机の上に目を向ける。
結果が出てからすでにだいぶ経っているテスト用紙や、塾の模試のプリント、DMなんかでパソコンの横がふさがっていた。 ちらりとめくってみたが、結局そのままゴミ箱行きとなる。 DMは、読んだら今度は、すぐいるものだけボードにでも貼って、それ以外は捨ててしまおう。 いつか・・・なんて思っても、取っておいたその情報が役に立ったためしがない。
机の横に、机と同じ高さでもう一つ設けてある引き出しの上に、読んでそのまま積み重ねてしまっていた本は、きょう寝る前に読む一冊だけを残して、本棚へ戻した。 下に下りて除菌のできるウエットティッシュを持ってきて、物がなくなった机の上と、パソコンとをすみずみまで拭いた。
見違えるほどきれいに広くなった机の上やその周囲を見て、以前本で読んだ事を思い出した。 机や床の平面積は、仕事の能率や出世と大いに関係があるらしい・・・平面の広がりというのは、豊かさのシンボルなのだそうだ。 だから、大きな銀行の床が広々としているのはそのためらしい。 逆に、机や床の上がごちゃごちゃしている人は、経済的な問題を抱えやすいんだそうな・・・。
こうやってきれいになったのを見ていると、それも一理ありそうな気がする。
今度は部屋全体を見回し、部屋の隅に重なっている雑誌や、ハンガーラックにただひっかけてある上着やズボン、バッグなどをきれいに整頓した。 雑誌の方は、以前通販で何かを買ったのがきっかけで、その後も毎号届く分厚いカタログやら、ずいぶん前の週刊誌もあった。 取っておいてあるわけでもないが、放置しておくと自然とそれきり忘れてしまう。 知識によれば、無意識がそれに慣れているから平気だという事らしいが、それで平気だという事は・・・。 今度からは意識的に片づける努力をしよう、と小さな決意。
さっきの本の原則は、一つ増やす時は、それまで持っていたものの中から一つ捨てる、だっけ。 そう考えれば不必要なものを安易に買う事もなくなるだろう。 『本当に必要なものは、必要な時に現れる』 という、どこかの神様の金言もあった。
すっきりしたら掃除機をかけたくなったので、もう一度下に下りて持ってくる。 母親がいなくなればその日から、生活に必要なすべての事は自分がやらなくてはならないのだ。 当たり前だが。 掃除機を戻しに行ったついでに、自分の食べ終えた後の食器も洗った。
さすがにきれいになった部屋を眺めていたら、なんだか花を飾りたくなった。 不思議なものだ。 これも心の余裕というやつだろう。
掃除のために開け放した窓から、冷たい冬の空気が流れ込んでくる。 そろそろ閉めよう。
この次病院に行く時には、みちるさんにも花を買って行こう。 それは自分でも、最高の思いつきに思えた。